「日差しが強くなる季節、内側から日焼けを防げたらいいのに」。
そんな願望に応えるかのように、一部のSNSや美容ブログでは「高カカオチョコレートが日焼け止めになる」という話が話題になっています。チョコレートで紫外線を防げるなら、手軽でおいしく、習慣化しやすいですよね。
実際に「チョコを毎日食べていたら焼けにくくなった気がする」「カカオポリフェノールが抗酸化作用を持つらしい」といった声も聞かれます。でも、それは科学的に見て信頼できる話なのでしょうか?
この記事では、「高カカオチョコレートが本当に日焼け止め代わりになるのか?」をテーマに、医学的・栄養学的観点から検証していきます。
- 高カカオチョコレートとは?その健康効果
- 紫外線と日焼けのメカニズム
- 高カカオチョコの「日焼け止め効果」は本当にあるのか?
- 専門家の意見は?
- 結論:チョコはサポーター、主役ではない
- チョコレートの摂取量と選び方
- おわりに:美肌は毎日の積み重ねから
高カカオチョコレートとは?その健康効果
まず「高カカオチョコレート」とは、一般にカカオ分70%以上のチョコレートを指します。スーパーやコンビニでも「CACAO 72%」「CACAO 86%」といった商品を目にすることが増えました。
高カカオチョコレートは、カカオ豆に含まれるポリフェノール類が豊富で、以下のような健康効果が期待されています。
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抗酸化作用による細胞老化の抑制
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血管拡張作用による血流改善
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集中力・記憶力の維持
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血圧の安定
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美容や肌の老化予防
とりわけ注目されているのが、カカオに含まれるフラバノールという成分です。これはポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用があり、活性酸素を抑える働きがあります。ではこのフラバノールが「日焼け防止」とどう関係しているのでしょうか?
紫外線と日焼けのメカニズム
そもそも、私たちはなぜ「日焼け」するのでしょうか?日焼けとは、紫外線(UV)によって肌に炎症が起こる現象です。紫外線には大きく分けて以下の2種類があります。
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UV-A(波長が長く、肌の奥=真皮まで届き、しわやたるみの原因になる)
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UV-B(波長が短く、表皮にダメージを与えて赤く炎症を起こす)
これらの紫外線が肌にあたると、体は防御反応としてメラニン色素を作り出し、肌が黒くなります。これは一種の「天然の防御膜」なのですが、長時間の曝露は細胞を傷つけ、活性酸素を大量発生させ、シミや老化、皮膚がんの原因にもなります。
そのため、日焼け止めクリームや衣服での遮断、そして抗酸化作用をもつ食品の摂取が予防の手段として注目されているのです。
高カカオチョコの「日焼け止め効果」は本当にあるのか?
ここで本題に戻ります。「高カカオチョコレートは本当に日焼けを防げるのか?」
答えは――「完全には防げないが、補助的な効果は期待できる」というのが現在の科学的な見解です。
■ 科学的研究の例
いくつかの研究では、カカオフラバノールの摂取が肌のUV耐性を高める可能性を示しています。
たとえば、ドイツで行われた研究では、12週間にわたり高濃度カカオフラバノールを含む飲料を摂取したグループで、紫外線に対する耐性(MED=最小紅斑量)が有意に高まったという報告があります。
また、皮膚の血流量の増加や、肌の水分量が改善されたとする研究もあります。
■ ただし重要な注意点
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効果は「補助的なレベル」であり、日焼け止めクリームの代替にはならない
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摂取量や個人差が大きく、効果の持続性にも不明点が多い
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糖分・脂肪分の摂りすぎには注意が必要
つまり、「食べていれば焼けない」というのは過剰な期待です。むしろ、「日焼けを防ぐための体内環境づくりの一助」程度にとらえるのが正確でしょう。
専門家の意見は?
皮膚科医や管理栄養士の多くは、次のような立場をとっています。
「高カカオチョコの抗酸化作用は確かに肌に良い影響を与えますが、それだけで紫外線を防げるわけではありません。あくまで食事の一部としての“内側からのケア”です」
「ポリフェノールは継続的な摂取が重要。たまに食べるだけでは意味がありません。また、チョコレートは脂質も多いため、摂取量には注意を」
このように、「カカオ=日焼け止め」という認識は誤解です。正しく理解し、他の紫外線対策と併用してこそ意味があると考えるべきでしょう。
結論:チョコはサポーター、主役ではない
高カカオチョコレートには美容や健康へのプラス効果があることは間違いありません。
しかし、「それだけで日焼け止めの代わりになる」というのは、現時点では誇張された表現です。
現実的な結論としては
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高カカオチョコは日焼け対策の補助要素として有効
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紫外線対策の主役は「日焼け止め+帽子や長袖+UVカット眼鏡」などの外的防御
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チョコレートの摂取は、「肌の土台を整える」目的で継続的に取り入れるのが良い
また、同様に抗酸化作用を持つ食品(トマトのリコピン、にんじんのβカロテン、緑茶のカテキンなど)も、日焼け対策を考えるうえで併せて取り入れるとよいでしょう。
チョコレートの摂取量と選び方
美肌目的で高カカオチョコレートを取り入れる場合、以下のポイントを押さえましょう。
目安量
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1日20〜30g程度(板チョコの1/3〜1/2枚ほど)
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食後や間食に少量ずつ、継続的に摂るのが理想
商品の選び方
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カカオ70%以上
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砂糖・ミルクが少ないもの(成分表示を確認)
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カカオマスが主原料であるものを優先
もちろん、カロリーもあるため「食べれば食べるほど美肌に近づく」というものではありません。過剰摂取にはくれぐれも注意しましょう。
おわりに:美肌は毎日の積み重ねから
「チョコで日焼け防止」は、夢のような話かもしれません。実際にはそれほど都合の良い話ではありませんが、“食べ物で肌を守る”という考え方そのものは、非常に理にかなっています。
高カカオチョコレートは、美肌を目指す人にとって強力なサポーターにはなり得ます。
でも、それを主役にしてしまうのではなく、日焼け止め・衣服・生活習慣・栄養バランスの中の「1ピース」として取り入れていくことが、美容と健康の正しい道です。