
慢性疾患で病院に通っている人の多くが、こんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。
「診察は数分なのに、待ち時間は1時間以上」
「結局いつも同じ薬をもらうだけ」
高血圧や糖尿病などの慢性疾患では、症状が安定している場合でも毎月のように通院しなければならないケースが少なくありません。多くの患者にとって、通院の目的は「診察」というよりも「薬をもらうこと」になっているのが実情です。
しかし実は、こうした負担を減らすための制度が日本にも存在します。それが「リフィル処方箋」です。
ところが、この便利な制度はあまり知られておらず、利用もほとんど広がっていません。なぜリフィル処方箋は普及しないのでしょうか。その背景には、日本の医療制度の構造や医療機関の事情が関係している可能性も指摘されています。
この記事では、リフィル処方箋の仕組みやメリット、そして普及しない理由について詳しく解説します。
- リフィル処方箋とは何か
- リフィル処方箋のメリット
- リフィル処方箋はほとんど使われていない
- 医師が発行しなければ利用できない
- 医者の儲けが減るから?という指摘
- 医師側にも事情はある
- 海外では一般的な制度
- 患者ができること
- まとめ
リフィル処方箋とは何か
リフィル処方箋とは、同じ薬を繰り返し受け取ることができる処方箋のことです。通常の処方箋の場合、薬をもらうためには毎回医師の診察を受ける必要があります。しかしリフィル処方箋では、一度の診察で最大3回まで薬を受け取ることができます。
つまり、最初の診察のあとに処方箋を持って薬局へ行けば、次回以降は病院に行かなくても薬局だけで薬を受け取ることが可能になります。この制度は、日本では2022年に導入されました。
対象になるのは主に、症状が安定している慢性疾患です。例えば次のような病気が代表例です。
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・アレルギー疾患
・喘息など
これらの病気は長期間同じ薬を服用するケースが多いため、リフィル処方箋と相性が良いとされています。海外ではこの仕組みは珍しいものではなく、アメリカやヨーロッパでは一般的に利用されています。
リフィル処方箋のメリット
通院回数が減る
最大のメリットは、病院に行く回数が減ることです。例えば毎月通院していた人がリフィル処方箋を利用すれば、通院回数を3分の1程度まで減らすことができます。仕事が忙しい人や高齢者にとっては大きな負担軽減になります。
待ち時間が減る
日本の病院は待ち時間が長いことで知られています。数分の診察のために何時間も待つというケースも珍しくありません。リフィル処方箋を利用すれば、こうした待ち時間から解放されます。
医療費が安くなる
通院回数が減るということは、その分だけ診察料も減るということです。薬の料金は変わりませんが、再診料などが減るため医療費の節約につながります。
医療機関の混雑を減らせる
リフィル処方箋は患者だけでなく、医療機関にもメリットがあります。薬をもらうだけの患者が減れば、本当に診察が必要な患者に時間を使えるようになります。結果として医療の効率化につながる可能性があります。
このように考えると、リフィル処方箋は患者にも医療機関にもメリットがある制度のように思えます。しかし現実には、ほとんど普及していないのです。
リフィル処方箋はほとんど使われていない
制度が始まってから数年が経ちましたが、リフィル処方箋の利用率はまだ非常に低いといわれています。多くの患者は、この制度の存在すら知りません。また、医師から説明されることもあまり多くないと言われています。
なぜこんな便利な制度が広がらないのでしょうか。その理由の一つとして挙げられるのが、「医師の判断が必要」という点です。
医師が発行しなければ利用できない
リフィル処方箋は、患者が希望すれば必ず出してもらえるものではありません。最終的な判断は医師が行います。
つまり、医師が「リフィル処方箋は適さない」と判断すれば発行されません。患者が制度を知っていても、医師が出さなければ利用できない仕組みになっています。この点が、普及が進まない理由の一つと考えられています。
医者の儲けが減るから?という指摘
リフィル処方箋が普及しない理由として、しばしば指摘されるのが医療機関の収入の問題です。日本の医療機関は、診察ごとに診療報酬が支払われる仕組みになっています。
例えば、患者が月に一度通院すれば、そのたびに再診料などが発生します。しかしリフィル処方箋を利用して通院回数が減れば、その分だけ診療報酬も減る可能性があります。
つまり極端に言えば、リフィル処方箋が広く利用されると医療機関の収入が減る可能性があるというわけです。
もちろんすべての医師がこの理由でリフィル処方箋を出さないわけではありません。しかし制度の構造上、医療機関側にとって積極的に勧めるメリットが少ないという指摘は以前からあります。
医師側にも事情はある
一方で、医師側にもリフィル処方箋に慎重になる理由があります。それは患者の安全です。慢性疾患であっても、体調や数値が変化することは珍しくありません。例えば高血圧の場合、血圧が大きく変化することもあります。
定期的に診察を行うことで、医師は次のようなことを確認しています。
・薬の副作用
・症状の変化
・生活習慣の状態
・検査結果
もし通院回数が減ると、こうした変化を見逃してしまう可能性があります。そのため医師が慎重になるのも無理はありません。また、日本では長年「定期診察で管理する医療」が主流だったため、文化的な要因もあると言われています。
海外では一般的な制度
日本では珍しいリフィル処方箋ですが、海外では一般的に利用されています。アメリカやヨーロッパでは、同じ薬を90日分まとめて処方することも珍しくありません。また薬のリフィル(再処方)は日常的に行われています。
それに比べると、日本は通院回数が多い国と言われています。患者の負担を減らすためにも、今後リフィル処方箋が普及する可能性は十分にあります。
患者ができること
もし慢性疾患で長く同じ薬を飲んでいる場合は、一度医師に相談してみる価値があります。例えば次のように聞いてみると良いでしょう。
「リフィル処方箋は利用できますか?」
症状が安定していれば、医師が許可してくれる可能性もあります。すべての患者に適している制度ではありませんが、通院の負担を減らせる選択肢の一つであることは間違いありません。
まとめ
リフィル処方箋とは、一度の診察で同じ薬を最大3回まで受け取ることができる制度で、通院回数を減らせる便利な仕組みです。高血圧や糖尿病などの慢性疾患で症状が安定している場合、病院へ行かなくても薬局で薬を受け取れるため、待ち時間や医療費の負担を軽減できる可能性があります。
しかし、日本ではこの制度の認知度がまだ低く、実際の利用もあまり広がっていません。その背景には、医師の判断が必要な制度であることや、日本の医療制度の仕組み、さらに患者の安全管理といったさまざまな事情があると考えられています。
もし毎月同じ薬をもらうためだけに通院している場合は、リフィル処方箋という選択肢があることを知っておくとよいでしょう。症状が安定していれば、医師に相談することで通院の負担を減らせる可能性があります。今後、患者の利便性や医療費削減の観点から、この制度がどのように普及していくのか注目されます。