皆さんご存じの通り日本は25年以上経済成長していない国です。下のグラフは1980年の各国のGDPを1とした場合の成長率を表したグラフです。1980年の時点に対して、何倍になったかを数値として表現しています。
「引用元 成長しない日本のGDP、停滞の20年で米国は日本の4倍、中国は3倍の規模に (l_kmishima_sme2_5_w590.jpg) - MONOist」
見れば一目瞭然ですが、1997年ぐらいから日本は全く成長していませんね。ヨーロッパの劣等国と言われているドイツですら+30%の成長率なのに、日本はなんと-20%という衝撃。
この25年という長い期間デフレにさらされた国民は、特に若者はいったいどうなってしまったのか。今回は心理学の観点から見ていきたいと思います。
なんか偉そうなこと言ってますが、私は心理学者でも心理学を学んだわけでもなく、昔から心理学に興味があって自分なりに本を読んで少し勉強しただけなので、「素人がなんかいってらぁ」ぐらいの感じでみてください。
心理学には『学習性無力感』という言葉があります。これはペンシルバニア大学の心理学者マーティン・セグリマンが、1975年に行った実験によって定義された概念です。
以下実験内容。
1日目・犬をハンモックに縛り付け、何をしても逃れられないようにして何の前触れもなく数十回の電気ショック(数秒間)を与える(虐待以外の何物でもないですよね)。
2日目・部屋を柵で半分に仕切り、部屋の片方に電気ショックが流れる場合は、もう一方は何も流れないという条件を設定し、さらに電気ショックが流れる前触れを与える。
つまり犬は電気ショックの前触れが来たら柵を乗り越えて隣のスペースに逃げればいいだけということになる。実際どうだったのか。
実験した150頭の犬の2/3が「無気力」で、電気ショックが来ると慌てるものの、すぐにあきらめてただ耐えるだけだったのだ。
1日目何をやっても逃れられない電気ショックを耐えるしかなかった犬は、2日目逃げられる環境にいながらほとんどの犬がただ耐えるだけしかできなくなっていた。
これ結構有名な実験らしいです。
しかし、結局数十回の電気ショックで痛めつけたから逃げられなくなっていただけじゃないのかという疑問があったので、セグリマンは違うパターンの実験をします。
縛り付けて逃げられない状態でショックを与える犬、ショックは与えるけど逃げられる環境の犬、電気ショックも何も与えない犬。
するとやはり縛り付けられた犬だけが無気力にる。犬以外に、猫、ねずみ、猿でも同じ結果になった。
さて人間はどうなのか。オレゴン州立大学大学院生のヒロトという人物が人間で実験をした。
以下実験内容。
第1グループ・ボタンを押すことによって騒音を止めることができる被験者グループ。
第2グループ・どう反応しても騒音を止めることができない被験者グループ。
第3グループ・そもそも騒音に晒されることのない被験者グループ。
その後、騒音が与えられたときに反対側に手を動かせば騒音が止められると言う装置(半分に仕切られた箱)の中に手を入れさせられる。するとどうなったか?
第2グループだけが、ただ受動的に座り、不快な騒音をただ黙って聴いていた。
ただ黙ってデフレに耐えている日本人と被るのは私だけだろうか。
耐えることが日常化していてその苦痛すら麻痺している状態だ。
それとこの実験を見て思うのは、虐待を受けている家庭の子供達もこの状態になっているのではないかということだ。
虐待されている子供は耐えることが「善」になっていて反抗するともっとやられるからそれが「悪」になる。
耐えちゃいけないものに耐えるのが「善」になってしまっているというのが日本人全体が陥っている症状なのではないでしょうか。
「学習性無力感」とは。
①環境に能動的に反応する意欲の低下。つまり人間は環境が変わったらその環境にどうやって適応するか考えるはずなのに、その思考が無くなって今あることに迎合しちゃおうとなるので「迎合主義」が加速してしまう。
②学習能力の低下。新しいものを吸収しようとする活力が低下してしまう。
③情緒的な混乱。不安なので目の前のことに落ち着いて取り組むことが出来なくなる。
この3つに陥ってしまうことだと思う。これに陥ってしまうと、全体主義や信者ビジネスに簡単になびいてしまう恐れがある。
私の世代はよく「ロストジェネレーション」と言われるが、そもそも「バブル」のような好景気を経験していないので痛みがよくわからない。
社会に出た時からずっとこんなだから「こんなもんだろう」としか思ってなかった。たぶん大半の人間がそうなんだと思う。しかし大人になってくると日本の現状が少し見えてきて、絶望と怒りが混じった何とも言えない気持ちになる。
そしてここ数年の流行り病で学生たちは青春を断ち切られ、この地獄のような社会で生きていかなければならない。二代目ロストジェネレーションといったところか。
今40代の引きこもりが社会問題になっている。まさに我々世代だ。世の中では80,50問題と言われているが、今の40代が引きこもれているのは、親世代がお金を持っているからだ。豊かな日本を享受し、働き盛りの40代の時に「バブル」を経験している世代。
しかし今10代後半から20代前半の子たちの親はロストジェネレーション世代。つまりお金が無いのだ。もし二代目ロストジェネレーションの子供たちが社会からドロップアウトした時、その親である初代ロストジェネレーションの我々世代は果たして支えることができるのか。
問題は山積している。