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『鬱』の時代傾向

以前「長期デフレが招く学習性無力感と鬱」について書かせてもらいましたが、今回は25年以上続くデフレ状態に晒されている日本人の『鬱』の傾向を、社会学者の土井孝義先生の分析をもとに解説していきたいと思います。 

 

①鬱病・躁鬱病などの気分障害患者

 1999年=44万人⇒2008年=104万人(厚生労働省調査)。

 40代~50代の従来型『鬱』ではなく、20代~30代の新型『鬱』が増加。

2008年はリーマンショックが起きた年ですね。それから10年以上たった今は流行り病でズタズタになっているのでもっと増えているのではないでしょうか。

興味深いのは従来型『鬱』ではなく、新型『鬱』が増えていることです。人は大体中年になると仕事で疲れてきたり、身体が思うように動かなくなったり、老後のこととか考えたりして鬱っぽくなるものなのですが、20代~30代のまだ可能性に満ちている世代がもう「無い」と思い始めているということです。

 

②2000年~「勤勉に働いても人生に成功するとは限らない」と思う人の割合の増加(2021年・世界価値観調査)。

 50代以上では「努力」重視が半数。30代以下は「運」重視が半数。40代は「努力」と「運」が拮抗。

30代以下の若者は、「人生は運でしかないから努力してもしょうがない」と思っている人が半数もいるのです。これは最近話題になった『親ガチャ』の感覚なのでしょうか。

かくいう私もほとんどこの感覚に近いものを持っていました。2000年代は20代の若者でしたから。

 

③2010年代~「人生は思い通りにならない」と思う人の割合(38.6%)の増加(世界6位・2021年世界価値観調査)

割合自体は高年層の方が多いが、増加傾向自体は若年層の方が早く現れている。

「人生は思い通りにならない」なんていうことは、年を取ってくれば皆わかることだから高年層の方が多いのは当たり前なのだが、勝ち気で怖いものなしの若年層に増えてきてることが興味深い。若いうちから達観しているんでしょうね。

しかも世界6位と言いますが、1位から5位までは後進国です。先進国で圧倒的1位が日本なのです。ちなみに中国は35位、韓国は68位。

さらに言うと、調査対象の国の中で最下位は今後10年間で一番発展すると言われているベトナム(77位)です。つまり成長を続ける国の若者は人生に希望を持てているということです。

 

④「現状を変えようとするより、そのまま受け入れた方が楽に暮らせる」と答える人の増加。

 1980年=25%⇒2011年=57%(日本青少年研究所調査)

つまり6割ぐらいの人間が「波風立てずに今ある状況を受け入れて生きていこう」と思っているわけです。だからマスクをしろと言われれば外でもマスクをするし、自粛しろと言われれば、強制力などないのに従う。

『私の人生は不要不急なのか?』と疑問すら持たないのかも。

 

なんでこんなことになったのか。日本人がそう簡単に変わるわけがないし、人間の「核」の部分が変わるわけでもないので、どう考えても時代状況がもたらす現象としか考えられない。

そう思うと25年間にも及ぶデフレスパイラルは無視できないと思います。

デフレは1997年から始まっていますから、20代の若者にしてみれば産まれた時からデフレでそれが当たり前なわけです。そりゃ「もがいてもしょうがない」となりますよね。

先日会った20代男性公務員の方は、日本の現状をよく理解していて危機感も持っていました。しかし「もがいたところで何も変わらないから、自分だけは何とか生きていけるように考えるだけです」と言っていた。

彼は公務員だが今の世の中ではきっと「勝ち組」なのだろう。

 

 

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