今から22年前、私はブラジリアン柔術のチームに所属していたのですが、殆どがブラジル人で、日本人は数人しかいませんでした。当時はみんなお金がなく、私はその日本人の中の1人、Sさんとルームシェアしていました。
Sさんは私の5歳年上でパチンコが大好き、休日は開店から閉店まで打っているような人で、前日には閉店前に台のデータをノートにメモり次の日のねらい目の台を絞るなど、パチンコに関しては努力を惜しまない人でした。
大勝ちした日には寿司をおごってくれたりもしました。まぁ大体は負けて帰ってくるんですけどね(>_<)
ある夏の日、私はSさんをプールに誘いました。しかしSさんはなんかごにょごにょ言って乗り気ではありません。何回かラリーが続いた後、急にSさんが真顔になって話し始めました。
Sさんの家は母子家庭で、子供はSさんと弟の二人。小さい頃は県営団地の一階に住んでいたそうです。
ある日の夜、Sさんと弟は部屋で寝ていました。その日は母親の彼氏が遊びに来ていて、隣の部屋で談笑していたそうです。
しばらくすると誰かが部屋に入ってきました。そしてSさんの隣に添い寝するような形で頭をなでてきたそうです。Sさんは母親の彼氏だと思い気にしていなかったのですが、今度は顔にキスをしてくるようになったそうです。
それでもSさんは、こういうかわいがり方をする人なんだろうなと思い我慢していたそうです。
しかしそのかわいがる手はどんどんエスカレートしていき、ついにはSさんの下半身にまで及びました。
さすがに怖くなって目を開けると、そこには知らない男がいました。そしてSさんの弟が必死で男の手をSさんから引き離そうとしていたそうです。
異変に気付いた母親と彼氏が飛び込んでくると、男は一目散に逃げていきました。母親がSさんを抱きしめ「もう大丈夫だからね」と言われた瞬間に、安心して体がガタガタ震えたそうです。
しばらくして落ち着きを取り戻し、布団に入ってふと外を見ると、さっきの男がSさんに手招きしていました。今度はちゃんと戸締りしていたので大丈夫だったそうですが、その後その男が捕まったかどうかは知らないそうです。
この事件があってから、Sさんは男の人と体が触れるのが怖くなり、体育の授業がずっとつらかったと言っていました。
でも何とかしたいと思っていて、このトラウマを克服するために柔術を習い始めたそうです。今では普通に男性と組み合えるようになったみたいですが、嫌なことに変わりはないようですね。
以上の理由からプールに行くのはつらいから無理だと言われ、こんな話を聞いてしまったらもう誘えるわけがないのでプールには行きませんでした。1人で行ってもつまらないですしね(-_-)
もう一つ。私が『姉さん(ねえさん)』と呼んで慕っている女性から聞いた話。
彼女が小学生のころ、授業中に担任の先生から毎日顔を舐められていたそうです。
しかしそれを母親に訴えても信じてもらえず、毎朝学校に行く時間になるとおなかが痛くなるようになり、不登校になってしまった(行かなくて正解だと思うが)。
教師に虐待をうけ、親にも守ってもらえず、彼女は中学校もろくにいかずに裏道を歩き始める。彼女の気持ちに寄り添ってみればそれを責めることはできない。
そして今彼女は、裏道を歩いた経験を活かし見事に立ち回っている。まさに百戦錬磨の猛者だ。たまに会って聞く彼女の昔話は本当に面白い。ここには書けないことばかりでドン引きする話もあるが、普通に生きていたら絶対に経験できない(したくない)ことを経験してきた人間の話は心踊るのです。
静岡県の保育士3人が虐待の容疑で逮捕されたが、被害にあった子供たちのことを思うと胸が締め付けられます。
『一番強いものは一番やさしくなければならない』
それは保育園、学校、会社、国、家庭、すべてにおいてです。
権力を持つ側の人間はそれを肝に銘じてほしいものです。