決めつけないブログ

役立つ情報から無駄な情報まで

MENU

【実話】奇妙なお爺さんを助けた友人

これは私がまだ19歳のころ友達が体験した話。便宜上そいつをKと呼びます。

Kは中学生の時の同級生。優しい性格で顔は妻夫木聡に似ていたので女性によくモテていた。

しかしK本人は気持ちが固く、言い寄ってくる女性とは付き合わなかった。少しでもチャラチャラしてるとだめらしい。私もほかの友達も含め呆れていたほどだ。

性格もまじめで、一度パチンコ屋さんで見かけたときは私のところまできて「俺がパチンコやってたことは親には言わないで」と真顔で言ってきた。

『こいつはいったい何を言ってるんだ?いちいちお前がパチンコやってたことをお前の親に言うわけがないし、そもそもパチンコは犯罪でも何でもないんだぞ』と思ったがスルーした。もう真面目を通り越して様子がおかしい人になっていた。ちなみに今は結婚して子供もいます。

ある日、Kの車に乗ったら線香のにおいが充満していた。私が「なんか線香のにおいすごくない?」と聞いたらKが数日前に体験した話をしてくれた。

数日前友達と夜中まで遊んだKは、その友達を車で家まで送っていった。その友達の家からKの家までは大体10分ぐらいかかるのだが、地元の人しか通らないショートカットできる道がある。

その道は車一台分の幅しかなく、道のすぐわきは土手になっていて2メートルぐらい下に側溝がある。

その道を走っていた時、前方に自転車が倒れていたそうだ。不思議に思いながらゆっくり車を走らせていると、土手の上でお爺さんが正座して手を合わせていたらしい。夜中の2時に。

普通ならやばいものを見たと思い一目散に走り去りそうなものだが、そこはさすがのK、車を停めてお爺さんに話しかけたというのだ。

そしてお爺さんを車に乗せ、自転車も車に積んでお爺さんの家まで送っていったらしい。

 


その道中Kはお爺さんの身の上話を聞いた。お爺さんは隣町の出身なのだが、娘の家族と埼玉県に住んでいたらしい。しかし娘の旦那さんとうまくいかず、家出したそうだ。

そして外国人専用の風俗で働いたのだがつらくてすぐ辞めた(私はK本人からこのお爺さんが働いていた風俗の内容を聞いていますがとてもここには書けません。言えることは外国人男性相手の仕事だということぐらいです)。

途方に暮れたお爺さんは、台風の日に東京湾に入って死のうとしたらしいのだが失敗した。お爺さんは「人間なかなか死ねないね」と言っていたそうだ。

そしてお爺さんは生まれ故郷の福島に帰ろうと思い自転車で福島まで帰ってきたところで転んでしまい、動けなくなって手を合わせてお経を唱えながら誰か通るのを待っていたらしい。そこをたまたまKが通りかかったわけだ。

突っ込みどころはいっぱいあるが、まずどう見ても70過ぎのお爺さん(Kの話では70代後半)が、東京付近から福島まで自転車で帰ってこれるのか。私の住む県北地方までは距離にして300キロはある。

ここらあたりまで聞いて私は「そのお爺さんはすでにこの世にはいなかったんじゃないか」という思いが湧いてきた。

お爺さんを家まで送っていったKは、家に上がって休んでいけと言う言葉に恐怖を覚えながらも断ることができず、お爺さんの家でしばらく話をしたらしい。

そして帰り際、お礼に日本人形を渡されそうになったのだが、さすがにそれだけは断ったそうだ。

そしてそのお爺さんが乗った後から車の中に線香のにおいがこびりついたと言うのだ。何をやってもその匂いは取れなかったらしい。

あまりに腑に落ちない話だったため、私はKに「そのおじいさんの家まで連れて行ってくれ」と頼みました。

KはKであの出来事は何だったのだろうと思っていたのか、私のお願いを聞いてくれました。

Kの記憶を頼りに隣町のお爺さんの家に行ってみると、その家は人が住んでいるとは思えないほどの廃墟でした。車から降りて確認するまでもありません。一目でだれも住んでないとわかる佇まいです。

私もKも何も話しませんでした。

それから少ししてKは車を売りました。そしてこの話をすることはKにとってかなりストレスがかかるらしく、本人の前で話すのは今でもタブーです。

これは私の勝手な解釈ですが、そのお爺さんは台風の日に海で亡くなっていたのではないかと思うんです。そして魂だけが生まれ故郷の福島に帰ってきたのではないかと。

Kはたまたまその魂と遭遇して手助けをしたんだと思います。