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子供のころ観たアニメ「坊ちゃん」からの「酔歌」

私が小学生のころ…たぶん5年生か6年生だったと思います。

BSで夏目漱石の小説「坊ちゃん」をアニメ化した作品を放送していました。

制作されたのは1980年。私がまだ2歳のころです。

坊ちゃんの声優は西城秀樹。キャラクターデザインはモンキーパンチ。

しかしこれらの情報は後に知ったことで、当時の私はただ単に夜ご飯の前の誰もいない居間で、テレビを独り占めできる唯一の時間を堪能していました。

私の家には居間と両親の部屋にしかテレビはありませんでした。もちろん私の部屋などなく、チャンネル権もありません。自由などない子供時代に唯一自由にテレビを見れたのがその時間だけでした。

アニメが始まり、冒頭の有名なセリフ「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」を聞いて、なんか聞いたことあるなこのセリフ…と思ったのを覚えています。

まだ生まれて12年ぐらいしかたっていない私でも、どこかで聞いたことがあるぐらい有名なセリフだったんでしょうね。

冒頭の部分が終わり、坊ちゃんが汽車に乗ったところで主題歌が流れます。

小学生の私は『なんか古臭い歌だなぁ』と思いながらも、意味はわからないがなんとも心地良い詞に心奪われました。

当時はインターネットなんてありませんから、すぐ調べることなんてできませんし、画面に出てくるスタッフや歌手の名前など見ていませんから、だれが歌っていてなんて言うタイトルなのかもわかりません。

 

それから数年して17歳になったころ、もう一度あの「坊ちゃん」を観ることができました。レンタルビデオで借りたのか、もう一度放送したのか全く覚えていませんが、とにかく観れました。そしてあの主題歌がわかりました。

歌っているのはデューク・エイセス。詞は島崎藤村の「酔歌」からとったものでした。歌のタイトルは書いていませんでした。

島崎藤村という名前もなんか聞いたことがあるなぁと思った私は、早速「酔歌」が収められている藤村の詩集「若菜集」を探し、手に入れることができました。

そして「酔歌」を読み、小学生のころに古臭い歌だなぁと思いながらも、なぜか心奪われた理由がわかりました。

と言っても、十代のころの私にはなんとなくぐらいにしかこの詩が何を言っているのかなど解っていなかったと思います。

そして今、45歳になった私にはこの詩がどんな風に聞こえるのか興味がわきました。前置きが長くなりすぎましたが、今回は「酔歌」の私なりの解釈を書きたいと思います。

まず「酔歌」を読んで下さい。

 

酔歌

 

旅と旅との君や我

君と我とのなかなれば

酔ふて袂(たもと)の歌草(うたぐさ)を

醒めての君に見せばやな

 

若き命も過ぎぬ間に

楽しき春は老いやすし

誰(た)が身にもてる宝ぞや

君くれなゐのかほばせは

 

君がまなこに涙あり

君が眉には憂愁(うれひ)あり

堅く結べるその口に

それ声も無きなげきあり

 

名もなき道を説くなかれ

名もなき旅を行くなかれ

甲斐(かひ)なきことをなげくより

来(きた)りて美(うま)き酒に泣け

 

光もあらぬ春の日の

独りさみしきものぐるひ

悲しき味の世の知恵に

老いにけらしな旅人よ

 

心の春の燈火(ともしび)に

若き命を照らし見よ

さくまを待たで花散らば

哀しからずや君が身は

 

わきめもふらで急ぎ行く

君の行衛(ゆくへ)はいずこぞや

琴花酒(ことはなさけ)のあるものを

とどまりたまへ旅人よ

 

ここから私の勝手な解釈です。

まずシチュエーションですが、たぶん藤村は汽車で旅をしています。きっと酒を飲みながらいい気分で酔っているのでしょう。

そして藤村の向かいの席には汽車の中で出会った若者が座っているんだと思います。

きっとこの詩は、藤村がその若者に掛けた言葉なんでしょう。

 

「旅と旅との君や我」

お互い生まれたところも歳も違うけど

 

「君と我とのなかなれば」

ここでこうして出会ったのも何かの縁

 

「酔ふて袂(たもと)の歌草(うたぐさ)を 醒めての君に見せばやな」

(酒に酔って)気分がいいから俺の書いてる歌を見てくれないかい?

※袂とは和服の袖の下の袋。歌草とは歌とかを書き留めたノート

※なにか思い悩んで暗い顔をしている若者に上からでも、おせっかいでもなく、藤村流の気遣いで力になろうとしている

 

「若き命も過ぎぬ間に 楽しき春は老いやすし」

若い時の濃密な時間なんてあっという間に過ぎて気づいたら初老だよ…(*´Д`)

 

「誰(た)が身にもてる宝ぞや 君くれなゐのかほばせは」

君は宝を持っているんだよ、若さというね。その血色の良い顔も若さのあかしだよ

 

「君がまなこに涙あり 君が眉には憂愁(うれひ)あり」

でも君の目には涙が見えるし、ずっと暗い表情をしている

 

「堅く結べるその口に それ声も無きなげきあり」

その堅く結んだ口からは声にもならない嘆きが聞こえるようだ

 

「名もなき道を説くなかれ」 

まだ何者でもないんだから肩の力抜けよ

 

名もなき旅を行くなかれ」

まだ何者でもないのに自分を型にはめんなよ

 

「甲斐(かひ)なきことをなげくより 来(きた)りて美(うま)き酒に泣け」

やっちまったことなんて忘れてこの美味い酒呑んでみろよ。飛ぶぞ!

 

「光もあらぬ春の日の 独りさみしきものぐるひ」

一番楽しい時期に一人で憂鬱になってんのはもったいないよ

 

「悲しき味の世の知恵に 老いにけらしな旅人よ」

確かに現実は厳しいし辛いことの方が多いけど、それにとらわれて若さを無駄に消費するなよ少年

 

「心の春の燈火(ともしび)に 若き命を照らし見よ」

心に火を灯せ!そしてその火で自分を照らしてみろよ

 

「さくまを待たで花散らば 哀しからずや君が身は」

君の両手には有り余る未来があるのに、このままダメになったら哀しすぎるだろ

※さくまとは、農業で言うところの作間。作付けが終わって少しゆっくりできる期間。つまりこれから農作物ができるのを待つだけなのに、せっかく咲いた花が散ったら台無しになるということ

 

「わきめもふらで急ぎ行く 君の行衛(ゆくへ)はいずこぞや」

わき目もふらず一点だけを見つめて君はどこへ行こうとしてるんだい?

 

「琴花酒(ことはなさけ)のあるものを とどまりたまへ旅人よ」

一度立ち止まって周りを見てみなよ。きっとそこに楽しいことや面白いことが転がってるはずだよ

※琴花酒とは、音楽や美しいものや美味しいもの。つまり人生を楽しむために必要な要素。だと思ってます。

 

以上が私の解釈です。

十代のころにこの詩から受けた影響はかなり大きいものでした。そしてそれから数十年が過ぎ、自分がオヤジになってみると未だに何者でもない自分に辟易するとともに、それなりに面白い経験をしてる自分を面白がってる自分も居ます。

納得はしてないけどもうどうしようもないからあんまり考えんのやめようと思う人生をこれからも送っていくと思いますが、他人にあまり迷惑をかけずに生きていけたら幸いです。ありがとうございました。

 

 

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